2016年12月6日火曜日

沈んだ不沈艦・武蔵

戦艦武蔵の最後を検証するNHKの番組を当直室でみました。

見つかった武蔵の設計図と沈没した船の写真を3Dで再合成し、武蔵の最後を科学的に検証するという21世紀らしいドキュメンタリー番組でした。三菱重工業が作った戦艦武蔵。あの時代も今も、日本の重工業の象徴たるプロダクツは常にこの会社の製品群ですね。

40キロ先の敵を正確に撃破すると言われた世界最強の主砲三基に更に追加されている副砲群。まさに大艦巨砲主義というものを体現した戦艦で、大和とともに日本の最後の希望の星の一つでした。古い時代と新しい時代の戦略があの時代にあの場所で交わったのだと思います。

このときの攻撃ではまさに航空機軍による波状攻撃でやられたわけですが、実際に航空機に依る攻撃での大戦果を先ず認識していたのは日本であったはずなのに、結局のところその航空機攻撃の優勢さをその後の実践に活かしきれないだけの工業力・資源・大本営の脳味噌しかなかった日本の残念なところです。

また、モノの安全性や設計にに絶対というのは無いのだということを科学的な解析で嫌というほど理解させられる検証番組でした。リベット打ちに依るアーマーの繋ぎ合わせが結局のところは致命傷となったようなのですが、この弱点を知っていたにも拘らず、軍の上層部は結局それを放置して戦局を運に任せたという”いつもの日本”が浮き上がってきます。作戦はあっても戦略の細部を詰めるということが今も昔も出来ませんよね。

番組を見ていて私が思ったのはインタビューの中に出てこられた90歳前後の方々のお話でした。酸鼻を極めるその戦闘中の武蔵の艦橋の描写、そして、まさに沈んでいく瞬間の無数の戦闘員の阿鼻叫喚の模様は番組を見ていて”言葉を失う”という表現以外は何も有り様がないものでした。

時代時代の最高級の技術と大量の物的・人的資源を消費し尽くし知らない同士の人間が国家という名のもとに殺し合う戦争というのは無数の人々の運命をメチャクチャにしていくのだということを再度認識させられた重い重い一時間でした。

当時、この一艦で2500人ほどの乗組員がいたそうですが、その内1000人以上の方々がこの戦闘で亡くなられたといいます。英霊に合掌すると共に慟哭の歴史が二度と繰り返されないことを祈るばかりです。

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