2014年12月15日月曜日

誰にも語られない物語が有る

昨夜、当直中に患者さんが一人お亡くなりになりました。

齢は既に傘寿を超えた方で、この数週間容態が良くなかった方でした。時間は午前3時過ぎ。
お亡くなりになった時に看護師さんに伺った話では、この方の奥さんも既に八十代の半ばの方でお子さんも無い方という事でした。果たしてこの真夜中にこの方に電話してショックを与え、寒風吹きすさぶ中を来院せることが正しい事かどうか自体が疑問だったのですが、これをしない理由もまた有りませんので、取り敢えず連絡しました。

深夜のこの時間、通常は電話でもタクシーがなかなか捕まらない中、一時間ほどで遠い道を来られたお婆さんが病棟に上がって来られました。
御挨拶をしてお話をさせて頂く中、小さな背中を丸められたお婆さんを見ていると本当に人間の生老病死の現実とその残酷さをまざまざと見せつけられる思いでした。

しかし、お婆さんはほとんど何も話されること無く、御主人の御遺体とともに、一階にある霊安室を通り過ぎて寒空のもとに御遺体とともに出ました。遺体運搬車に乗せられたお爺さんの体はドアの下に消えていきました。
その後お婆さんと共に一階のソファのある部屋へ戻って行きましたが、タクシーを待つ間の30分ほどをお婆さん一人にしておくことは到底私には出来ませんでした。
当直医の仕事としてはそれ以上のことをする必要はなかったのですが、倫理的には到底自分自身が許せませんでした。
薄暗い電気の中、寒い廊下に居るお婆さんに「ここよりは暖かいお部屋に入りませんか」と言っても固辞され、「いや、寒いだろうと思って体のあちこちにカイロを入れてきましたので、、、」などと話されてソファに腰掛け続けていました。

私もそれ以上は勧めず代わりに隣りに座って一緒にお婆さんとタクシーを待つことにしたのですが、、、。この後の30分ほどで伺った話からは、こんな小さな体のお婆さんのどこにそんな歴史が有ったんだろうと言うような話がその口から紡ぎだされてきたのでした。

長くなったのでまた続きは明日書きます。

人気ブログランキングへ

0 件のコメント: