2012年8月1日水曜日

Conflict of Interest 利益相反

科学論文を書いたりグラントの提出をする時には内容もさりながらもう一つ非常に大切なことがあります。
それは一般に我々がCOI(Conflict of Interest)とよんでいるもので、日本語で言えば利益相反というべきものですかね。要するに科学的に検討する内容や議題に関して、直接間接に利害が関係したりする者が「その議題」に関して結論や討論を記述することで何らかの利他行為や自己の利益に関与している場合はCoIを宣言してそれから手を引くか、その旨を明記しそれを読むものにその記述者がどういう立場でその研究を議論しているかを「明確に」しなければならないのです。当然、我々は通常、研究内容に関して「COIが無い」ことをを宣言し、その透明性を担保するわけです。まあ、議会証言において偽証しないということを聖書に手をおいて誓う儀式とでも言えば良いのでしょうか。
こういう事が大切になったのには科学の歴史と深く関わっているからです。特に有名なのがタバコを巡る癌やその他の疾病と健康被害者の調査に関する研究の歴史です。例えば、研究費を出してくれている主体がタバコ関連企業だとします。ここで極端な話、研究内容が頭頸部癌とタバコの喫煙の関連に関するものだとすれば、誰もが容易に理解出来ますように、この研究自体、研究者が如何にフェアに結論を出したつもりでも、その結論にはバイアスがかかっているであろう「もの凄い疑い」が生じるわけです。これに対抗する措置として、例えば英国のガン研究で有名な論文では、タバコ関連会社からグラントを得ていたものは、そのグラントが終了して更に五年間はその研究者からの論文自体を受け付けないと明確に規定されていたはずです。
本当に一昔前の研究などは、この点の曖昧さがあったために、会社お抱えの御用学者が書いた論文がドンドコ出てきては、非御用学者の書いた論文と同じ土俵で堂々と戦っていたのですから、その信頼性は全く担保されていなかったわけです。いつ頃からこのことが当然のこととして根付いてきたのか、科学史の専門の先生などはこれ自体をよく研究されているはずですので、お願いしてでも習いたいものです。
私の研究に関連した身近な例では、erythorpoietinの癌患者投与における薬の副作用の有無を論ずる論文が昨年そのEPO自体を作っている会社から出されてきて腰を抜かしたことがありました。彼の論文の結論は影響なしというものでしたが、当然この信頼性には大きなマイナス要素がつくわけです。(パブリッシュ出来た事自体が、非常な驚きでしたが!)
喫煙と肺癌等の関連の研究では本当に歴史上に数多くの黒歴史が記録として残っていて、科学者の尊厳自体に傷をつけるようなインチキ報告も数十年前には数多くあったのですからCOIを順守することが如何に大切かということは二十一世紀の科学者にとって論を俟たない常識以前の約束事なのです。
さて、実はここまで話したことは次の「お笑い」意見広告へのながーーーーーーーーーーい前振りだったんですね。(笑)今日これを読んで、心の底から嗤(わら)ってしまったというのが今日この文章を書こうと思い立った理由です。これに関する検証は時間のある時におってしたいと思いますが、この文章書いた人のプロファイル読んで唖然としました。w
私、ある文章を読む時は、プロファイルが横に書かれていれば良いのですが、もし書かれていなければその人のバックグラウンドを必ず知るように検索していますし、時間が許せばその人が書いた他の文章にもざっと目を通すことにしています。今回のこの文章「典型的な」COIの例として紹介させていただきたいと思います。この前、JALに関してちょっと過激な文章をここに書きましたが、そのフォローの意味でもこれは検討しないといけないなと思って備忘録的に検討した文章を素人なりに書こうと思っています。眠いので続きはまた。w
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